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妄想電車 今年は記録的な猛暑だという 世界で最初に海底に沈んでしまう国のニュースを 昨夜テレビで見た 相変わらずこの電車は動かずに ホームから少しはみ出して止まったまま 五月も半ばを過ぎ 車窓から辛うじて見つける草木らが 夏の訪れを告げるけど 遠い国の危機より 四季の美しさよりも 僕がいるこのブルーの電車が 一秒でも早く動きだすことを今考えている 冷たい奴だとよく言われてきた 幼少の頃からまぁそれなりに褒められたり叱られたりで 普通の暮らしだ 普通ってなんやねん?と 昨夜の立ち飲み屋のおっさんが突っこんでた 個性がないだけやんとぼやいていた 若いはずがもう30を過ぎ 車窓に映る瞳の奥 潜んだ情熱は確かに うつろうことはないと勝手に思っちゃってるから 昨夜のおっさんの頬の傷より 朝から続いてる胃の痛みよりも 今となりの女性のドレスからのぞく太ももが気になって仕方ないんだ 淋しさを埋めるのは次の淋しさなのだろうか 宇宙に散りばめられた悲しみを 持てるだけ拾い集めて 落としてはまた拾う 相変わらずこの電車は動かない 何者かの持ち切れなくなった悲しみが 線路を塞いでしまったんだろう 取り巻く全ての環境は 僕の進行を遮ろうと 大気の流れさえ切ろうと 今度は大粒の涙と光の刄を打ち落とす 人身事故の電車のより となりの女の太ももよりも 僕はこのドシャブリと落雷を 傘を無くしてどう切り抜けようかを今考えている できるなら この雨が止むまで このまま止むまで動かないでくれ なんて思っていた あれ、僕は何処へ向かうんだっけ? なら、喜びを拾いにいこうか 誰かが落とした幸せを 拾い集めに行くとしようか 目を閉じて ただ祈っていよう この世界の美しさに この世界の素晴らしさに できるならこのまま ずっとこのまま |
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